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人を惹きつけるコツは『事件を起こすこと』…大道芸人KERAさんの周りに人が集まる理由

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人を惹きつけるコツは『事件を起こすこと』…大道芸人KERAさんの周りに人が集まる理由

kerapop/flickr

ある日、江ノ島で出会った路上パフォーマーKERAさん。

彼のパフォーマンスが始まると、なんでもない場所が、一瞬にしてステージへと変わります。

例えば、人並み外れた動きをしたり……

子供たちと一緒にマジックをしたり……

目を奪われるようなパントマイムをしたり……

最後には、息をのむ大迫力のダンスを披露しています。

15分ほどのショーでしたが、彼を囲む人の輪はどんどん広がり、最終的に100人ほどの観客が集まっていました。

これほどまでに人を惹きつけるKERAさんは一体何者なのでしょうか。

ご本人にお話を伺いました。

9.11のデモの中で踊るダンサーに心を奪われた

ダンスパフォーマンスを始めるきっかけとなったのは、あの9.11のデモでした。

幼い頃に心臓病を患っていたKERAさんは、人一倍身体を動かすことに興味を持ち、中学生の頃から自転車に熱中。

高校に入り自転車競技を始め、大学生の頃には自転車で日本縦断、カナダ横断を達成します。

「カナダ横断を終え、トロントから帰国しようとした時に、300kmほど離れたニューヨークで9.11テロが起きました。トロントで足止めをくらっている時、9.11のデモの中で踊るダンサーを見つけました。それがダンスとの出会いです。」

デモの中で踊るダンサーに心を奪われ、帰国後もその光景が忘れられなかったKERAさんは、半年後、マイケル・ジャクソンのバックダンサーをしていた外国人講師からダンスレッスンを受けます。

「変わった先生で、ダンスの振り付けはほとんど教えてくれず、レッスンの大半は筋トレでした。でもそれは、誰かの振り付けをマネするのではなく、“自分の踊り”を踊れるようにするレッスンでした。

そんな基礎を身につけるレッスンを詰み、いつしか身体を思い通りに動かせるように。

8ヶ月のレッスンを終え、独学で現在のスタイルを築き上げました。

人を惹きつけるには“事件を起こすこと”

kerapop/flickr

KERAさんが現れたら、自然と人が集まってくる。

そんな人を惹きつけるコツはなんでしょうか。

“事件を起こすこと”ですね。だって、こんな仮面を着けている人が道に現れたら事件じゃないですか。

“事件を起こす”というのは悪い意味ではなく、あくまで非日常を生み出し注目を集めるということ。

「意識しているのは、映画の中に出てくる『品のある悪役』です。この人深みにはまったらやばそうだけど眺めていたら美しい……そんな独特な存在感を、立ち方、話し方、身振り手振り、目線の飛ばし方で醸し出しています。」

また、人を惹きつけるだけでなく、意図的に距離を取ることもできるそう。

サイレント(無声)でパフォーマンスをしているので、たった3秒でも間があくとお客さんは減ってしまいます。だから人が集まりすぎてしまった時は、わざとテンポを崩してもたつかせることもあります」

公共の場でやる以上、スペースは限られていて、お客さんの収容人数にも制限があります。

間をあけることで、ちょっと鑑賞したかった人に帰る隙を与えられ、お互いに良い関係を築いていけるのです。

伝えたいことをぶつけるのは傲慢

kerapop/flickr

パフォーマンス中、あの仮面の裏で一体どんなことを考えているのでしょうか。

「その場にいるお客さんに楽しんでもらうことに全力を尽くす、それだけです。お客さんそれぞれの楽しみ方、捉え方があるので、こちらが伝えたいことをお客さんにぶつけるのは傲慢だと思っています。

人前で表現をすることは、何らかの思いを伝えるためだと思っていましたが実際は真逆。

僕をこう見てくれ!こう捉えてくれ!と押し付けることはしないのです。

「これは過去の失敗から学びました。昔はすごく尖っていて、真面目なシーンで笑っている人がいたら、仮面を外して『帰ってください』といったことがありました。その間ショーは中断します。しかしそれは、自分のこだわりに対して一部の人が不本意な反応をしていたことが許せなかっただけで、他のお客さんにとっては全く関係のないことでした。」

強い自我を持つことで、“お客さんに楽しんでもらう”という本来の目的を達成できないと知り、考えないようにしたそうです。

「尖っていた時代のパフォーマンスが良いという仲間もいます。あれは世間知らずだったからできたことで、悔いはありません。今落ち着いてしまったのは世間を知ってしまったからかもしれません。もしパフォーマーに教える機会があったら、“世間知らずは最大の強みだ”と言いたいです。

過去の失敗を成長の糧にして、前に進むKERAさんだからこそ言える説得力のある言葉です。

客層に合わせてパフォーマンスをする

kerapop/flickr

路上パフォーマンスには、様々なお客さんが集まります。

KERAさんによれば、年代によって大道芸人に求めるものは違うそう。

「20代〜30代は『完ぺきなものを見たい』、団塊世代は『反骨精神があるやつを見たい』、お年寄りは『応援したい』という異なるニーズがあります。だから、若者が多い時には展開の速いダンスを、団塊世代が多い時には情熱的なダンスやトークを、お年寄りが多い時にはゆっくりと人間味のあるダンスをします。」

客層以外に会場の大きさや音響環境など、いろんな要素を踏まえ、お客さんが楽しめる最大限のことをその場で考えて演目を決めています。

僕自身を好きになってもらうために仮面を外した

KERAさんの魅力の一つ、仮面をつけたきっかけはなんでしょうか。

「最初は恥ずかしかったからです。東京に住んで、東京でパフォーマンスをしているので知り合いに遭遇する可能性もあったから。ただ、仮面をつけてやるうちに、自分ではないキャラクターとして唯一無二の存在を見いだせました。また、素顔を見せないことで、お客さんに純度高く見てもらえていると思います。」

匿名であることで、パフォーマンスを純粋に楽しんでもらえるようにしたとのこと。

しかし、2011年からはパフォーマンスの途中で仮面を外すようになりました。

ただ芸を見てもらうだけでなく、僕自身を好きになってもらうために仮面を外しました。素顔を出して話すことで、僕がどんな人なのか知ってもらえるように。

今回私がインタビューをお願いしたのは、KERAさんの芸に感動しただけでなく、素顔や話し方からにじみ出る人柄に共感したからです。

「素顔を出すことで仕事の幅が広がりました。今はダンスパフォーマンスだけでなく、小学校で講演を行ったり、大学でキャリア教育もしています。」

これまでの経験を活かし、多分野で活動を続けています。

プロではなくアマチュアに戻りたい

kerapop/flickr

路上パフォーマンスから始まり、今ではアミューズメントパークやハイブランドのパーティーなどに引っ張りだこのプロダンサーとなったKERAさん。

今後の展望について聞くと、予想外の言葉が飛び出しました。

「実は、アマチュアに戻りたいんです。これまでプロとして貴重な経験をさせていただきました。しかし同時に求められることや背負わなきゃいけないことも多くて……。自分は一体何がしたいのかを改めて考えた時に、『ただ街中(まちなか)で笑わせて、笑われる人になりたい』と思ったんです。

求められる場所でパフォーマンスをすれば、期待通り観客を楽しませることはできます。

しかし、偶然の出会いやハプニングなど、予期せぬ要素が加わることで期待を超える楽しさが生まれるのが路上パフォーマンスです。

そのように本質的に芸を楽しめるよう、今後は準備をしていきたいと語りました。

質問に対し、1つずつ時間をかけて丁寧に答える姿から、芸に対する熱意やこだわりを感じました。

きっとこれらの思いがパフォーマンスにのって、大勢の観客の心を掴んで離さないのかもしれません。

KERAさんのパフォーマンスは、土曜日、日曜日に江ノ島や山下公園などで見ることができます。

詳しくはKERAさんの公式サイトをご覧ください。

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